同棲生活編  1

列車が故郷に着いた 駅から俺の家は近いので徒歩で家路に着く もう夕方で薄暗くなっていた 
カミイにとって この街がどんな風に見えているのだろう、、

家の玄関の鍵を開ける 3週間も留守にしてたからカビ臭い
あれ?片付いている?お袋が来て片付けてくれたらしい、、感謝、、、
カミイが困らないように家の中の案内をした、、

60インチのプロジェクションTVに驚いてた 後日見たが確かにサコンの店には置いてなかった、、、
まあ使い方はすぐ覚えるだろうがビデオ等 ダビング用に何台も有るから切り替えスイッチを
理解させるのが大変だ、、俺だって自分で配線して偶に忘れるから使えなかったりするし、、、

台所だってレンジの使い方だけでなくガスの使い方から教えなくてはならなかった
でも彼が最初に興味を示したのは洗濯機だった、、、
俺 1人の時は面倒くさくて使った事が無いけど まだ動くかな?大丈夫だった、、

風呂場も大変だ 風呂を使うと後で浴槽の掃除が面倒で長く使った事が無い、、、
男の裸も見れるし一挙両得で銭湯を利用してたから風呂場は物置と化していた、、、
ホテルと同じでトイレも同一室内だからそこだけ使える状態、、、
まあ今夜は無理でも明日でも片付けないとカミイとのHの後が困る、、、

俺の家は20歳過ぎの外国に憧れていた頃 建てたから全部洋風で畳の部屋が1つも無い
彼にとっては日本風の習慣を覚えなくても良いから その分 楽だろう、、、

部屋の案内が済んだところで俺の父母にカミイを挨拶に連れて行かなくては
銭湯も近くだから帰りに寄ってこよう

父母は国際電話で話してたからカミイがきても驚かなかった
でもカミイは日本風の挨拶を知らないから タイ風に拝むようにワイをして俺の両親戸惑ってた、、
彼とタイで過している間に簡単な単語位は覚えていたから 少し通訳して緊張がとけた、、
母が「この子と一生住む気かい?」って聞く VISAが3ヶ月だからそれは無理だってば、、、

帰りに銭湯に行く あれ?なかなか脱がないぞ、、そうかタイには銭湯無かったから判らないんだ、、
俺が脱いで先に風呂場に行くと 彼も同じようにして ついて来る でも顔がこわばっていた、、

その頃の俺はタイ人の習慣について殆ど知らなかったから
人前で脱ぐのが恥かしいって感覚 思いもよらなかった 
彼を見て怖がっているように見えたから誰も居ない室外の露天風呂に案内した

彼が入浴してる時 小さな子供が入ってきた 彼 飛び上がらんばかりに驚いて俺に言う
「何で子供がこんなスケベな場所にいる!」 俺 やっと解ったゲイサウナと勘違いしてる、、、
「日本では当り前の事 ここはスケベな場所じゃないよ」
しかしこれが彼の最初で最後の銭湯体験になった よっぽど恥かしい事らしい
誘っても2度と行こうとはしなかったし 後で温泉に行った時も大浴場には来なかった、、、

帰りがけ近くのいつも食ってる うどん屋で食事をとった
うどん屋と言っても定食も有る メニューを彼に上手く説明出来ない
まあタイで食ってたのと同じなら知ってるから「さば味噌煮込み定食」で注文した
彼 何とか箸が使えるようになってたから良かった、、次から好きなメニューの名前 覚えてね!

明日から仕事だ 今日は疲れているからH無しで早めに寝よう、、
彼も緊張で疲れていたらしい ベッドに横になるとすぐ寝てしまった、、、

日本の最初の日は終わった 明日以降 彼にとっては初体験ばかりが待っている、、、
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同棲生活編  2

一夜が明けた もともと昼頃起きるのが習慣だから今日も遅かった
カミイはもう目を覚ましソファーに座ってた
あ!悪かったね 君は早起きなんだ、、腹減ったんじゃない?

今まで一人暮しだったから食事は全て外食だった だから俺の家には炊飯器すら無かった
(偶にインスタント食品を食ったりするからガス位は来てるけど)
それに長い事 家を空けていたからパンの買い置きすら無かった、、

早速 買いに行かなくては、、、
彼を車に乗せて近くのスーパーに買い物に 更に電気店で必要な物を揃えた
俺 何か新婚気分でハッピーだった、、

家に帰り 簡単な食事を買ってきた物で済ませた後
手紙を通訳して貰ってたNさんの所に向かった
彼を見ながら「本当に連れて来れたんですね」って感心したように言われる

Nさんカミイとタイ語で話してたけど内容は判らなかった
まあ穏やかな話し方だから日本の事かタイの事の情報だろう
帰りぎわ「話せない時は電話で通訳しますから」って言ってくださった

自分の店に出勤だ友人に餌等の世話を頼んでいた猫の「ジェリー」が出迎えてくれる
新しい友人も歓迎しすぐに仲良くなってくれた
開店時間には まだ少し時間があったが 今日から出勤と友人に電話しておいたから
店の入り口に「**日から開店します」って張り紙が書いて貼ってあった

開店準備をしていると待ち切れない客が何組か待機しはじめた、、
この頃の俺の仕事は無線ブームとバブルが重なって凄く繁盛してた
仕事場には こなしきれない人数の客が順番待ちでならび まるでバス停みたいだった
食事の時間どころか小便にトイレに駆け込む時間を見つけるのも難しく
猫の餌なんて時間がなく寿司屋から猫用に「寿司定食」を出前してもらったりしてた

今は夢のようだが1ヶ月の収入が100万以下だとガッカリしてた時代だった
欲しい物は値段を考えず何でも手に入ったし 車なんてロータリーが好きでRX7を
傷がチョット付いただけでも買い換えて6台乗り継いだ時代だった
それでも収入の半分以上 貯金してたし将来の蓄えは忘れなかったけど、、、
今では軽自動車だし月50万の貯金をする為に生活費10万だから雲泥の差だ、、、

だから その頃の俺は天狗になってた「俺に出来ない事は無い 金さえ有れば何でも叶う」って
今考えれば金で手に入るものって物欲だけだし 金が有るが為に見えなかった事がいっぱい有る
でもその時代の経験を経たからこそ「金の有意義な使い方」をマスター出来たのも事実です
失敗は最大の教訓だものね!

カミイが「何 仕事すればいい」って聞く まあ今日は初日だから慣れるまで見ててね!
開店と同時に販売 修理 問合せに同時に答え作業する神風のような忙しさが戻ってきた
客が待ち時間をお互い同士の世間話で潰してる その相手も口が空いてる限り付き合う

中にはカミイを日本人と間違えて話し掛ける人もいれば 外人には英語とばかり喋る人もいた
どっちにしても彼には通じないが彼のキャラクターは人に好かれ好評だった
そして無線を通じ俺がカミイを連れて来た事は全ての客の周知事項となった

まず最初に彼が覚えた仕事は待ってる客にコーヒー等を出す事だった
これは俺が教えた訳じゃなく 彼が気を利かせて始めた事だが好評で毎日の仕事になった
(最初はインスタントコーヒーの量も知らないから薄かったり濃かったりしたが客のを見て
 見様見真似で自分で覚えてしまった 数日後にはアイスコーヒーも作ってた、、、)

地獄のような忙しさで弊店時間夜12時を過ぎてもまだ残業で食事も取れない
カミイには気の毒だったが結局午前2時過ぎまで残業した、、
そんな時間にはこんな田舎町の食堂は開いていないしコンビニすら無い田舎だったから
食事の為に20Km離れた24時間のファミリーレストランまで足を運んだ

俺は旅行の疲れが残っていたし仕事疲れも重なって食欲は無かったが
カミイは初めて見るファミレスに喜んでいた メニューも写真付きだから簡単だし、、、
値段を見て遠慮してたからどれでもいいよって指差しながら薦める
彼ステーキの一番安い物を指差すから高い物に誘導して注文した
後で聞いたら生まれて初めての 「憧れの」ステーキだったそうだ
彼が家に帰ってから言う 自分だけこんな贅沢な食べ物を食べて良いのかなって、、
ファミレスが贅沢とは考えた事も無かったからお互いの境遇の事を考えてしまった、、

寝る時間がきた 彼にとっては為れない時間帯に合わせるだけでも大変だったろうが
ちゃんと俺と寝てくれた 仕事で疲れていたけど今日からはこの時間だけは天国だ、、、
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同棲生活編 3

毎日 同じような朝から晩まで仕事って日が数日続いた
タイに行ってた間に機械が故障したお客が押し寄せて ただでさえ忙しい仕事が更に増えていた
元々趣味で好きだからやってる仕事だが あまりの多さに寝ている時以外は仕事の毎日で
早出 そして残業と昼12時から午前2時までの14時間労働でも時間が足りず
仕事の遣り残しは増えるばかりで俺の疲れもピークに達していた、、、

カミイは文句も言わず俺の不規則な時間に合わせて一緒にいてくれる
お客も常連客はカミイに色々教えたり「元気!」って日本語を覚えさせようとしている
近くのスーパーに行く時間も俺には無かったが客がカミイに買い物のしかたを教えてくれた

翌日1人で買い物に行かせた 彼喋れないから金が足りなくて困らないように
計算機を教えて持たしバーツへの換算も教えた
まあ1万円札を持たせたから足りないって事は無いが、、、

彼 買い物から帰ると「絶対バーツとの計算が違ってる」って言い張る
果物を買おうとしてタイの何倍 物によっては何十倍もの値段だ そんな筈は無いって、、、
俺の会話力では無理だからNさんの電話番号を教えた そしたら彼 凄いショックを受けてた
日本の物価はキチガイだって、、確かにリンゴ1個の値段が彼のタイでの日当より高いけど、、、

まあ数日したら何とか慣れて買い物が出来るようになったけど 彼ケチになっちゃった、、、
朝 俺が目を覚ますと朝食が用意してあった 
彼に計算機を渡したから外食が高いって事に気付いてパンや卵を買い込んだって訳 だ、、

俺が仕事に追われて外食にすら行く時間が無いのを見て彼 仕事場でも食事を作り出した
残念ながら彼が1から作る料理は俺の口には合わなかったが気持ちは嬉しかった、、
(でも その内にNさんに聞いたりして彼が帰る頃には完璧な日本食が作れるようになった)

この頃の話をちょっと
店の外の自動販売機に俺が「人が入って売っている」って嘘を冗談で言ったら 彼時々見ていた 
そして「1日御飯も食べてないよ休ませないと可愛そう」って俺 に言う
ゲゲヶ 本気にしてた、、、これから嘘を言うのは冗談でもやめよう、、

仕事が多過ぎて客の制限を始めた これ以上どうしようも無く 身体が続かないから、、
今まで原則的に修理は待っていれば必ずその場で済ましその日の内に持ち帰れる と 
いうのがモットーだったが時間が掛る物は預かる事にした
1人の為に他のお客さんを長時間待たせるのは気の毒だったから

また当店以外で買われて技術力が無く 俺の店に修理のみ依頼される方は
技術料を倍にして出来るだけ来店されないように仕向けた、、、、
本当はこんな事したくないけど俺に出来るのは1日平均25台の修理が精一杯だったから、、

話を戻そう
カミイ 俺がてんてこ舞いしているのを見て 同じような無線機でフタの開閉のネジが同じなら
いつの間にか手伝って開け閉めできるようになっていた
又 単純作業の繰り返しなら手伝えるようになった

帰国後10日もたった頃には そこらのサボる高校生より作業が早くなって立派な助手になった
今まで客が多くて定休日も休めなかったが今度は休めそうだった

彼も日本に来て俺が相手出来るのは寝る前の僅かな時間だけだったが
彼に近くの名所でも見せてこの辺の事を知ってもらおう 
それは俺にとって片思いの相手との初めての日本でのデートになる筈だ、、
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同棲生活編 4

彼が海が見たいと言うので熊本県に近い長島って島に行くことにした
この島は橋で繋がっているから車で渡れる
俺の家から この島まで行く近道は田舎道を通って行く事に為るが
彼「こんな細い道まで舗装されてる」って変なところで感心してる、、、

途中で朝と昼飯兼用で小さなレストランに入った この店は「美味い」って評判のシェフがいる
海の幸をふんだんに使ったフルコースに近いランチメニューを注文
カミイはナイフやフォークが一杯のコースメニューは初めての筈だが結構上手に食っ ている
ただ いろんなソースは苦手らしく全部どかして食べていた

彼がデザートのメロンを食って「これ美味い 種が貰えないかな」って言う
そのまま植えても同じ美味いメロンが出来るとは思えないし
「種を下さい」って言うのも恥かしかったが彼の為にお願いして
削り取った種の部分をラップに包んで わけて貰った
(後で家に帰ってから種だけを取り出して干していた)

橋を渡る この場所は「日本3大 急流」の1つと呼ばれていて橋のたもとから渦が見える
そんな難しいタイ語は解らないから説明は出来なかったが感動ぎみに見ていた
更に車を走らせこの島の頂上に辿り着く 遠くまで島が一望できる
彼 山も知らないって この高台からの景色にも感動ぎみ

そして周りに浮かぶ小さな島々にも関心を示してる、、又 海に浮かぶ囲いにも、、
(天草海苔の産地でも有り 東町のブリ養殖は全国的にも有名)
じゃ その囲いの方に降りていってみよう 来た道と反対側に道を下る

養殖の餌をやる小船にお願いして短時間だけ乗せてもらった
デカイ魚が餌を投げ込む度にバァーっと群がる 鰤(ブリ)って魚は小型の鰹くらい の大きさがある
その大きさに彼は驚いていた(彼の家の傍の川には小魚しかいないと言う)

少し離れた海水浴場にも行った 季節がまだ少し早かったから行楽客は居なかったが
砂場で貝掘りをしている人達がいた 彼最初は見ていたが貝掘りに参加していた
俺は足が濡れるのが嫌で車に待機していたが1時間位で結構取ってきた
小さな木切れの棒だけで これだけ取れたら大漁だ、、スーパーの袋に入れて持ち 帰った、、

彼 帰りの車の中で嬉しそうに潮干狩りの様子を話す
俺にとっては見慣れた光景だが彼の家はラオスに近い内陸部 
これが今日一番のハイライトだったらしい

味噌汁の中に入れるアサリは美味いが彼が味噌汁を苦手なので「お吸い物」にした
また1つだけチョッピリ大きなハマグリが混ざっていたから砂抜きしてから網焼きにして
パカッと開いたところで彼に「食べてごらん」って薦めた

彼は熱い料理はあまり食べないが自分で取った貝に「熱い」って言いながら舌包み
新鮮な魚介類を「簡単で自然な調理」で食べるのはおそらく初めての経験の筈だ
残ったアサリやお吸い物を俺の両親の家に届けた
海育ちの母が「1時間でこんなに取れるなら 今度そこに連れて行って」と言った、、、

俺にとって久しぶりの定休日は夕方までこんな感じで終った
彼の傍に居るだけで満足だったが 彼が楽しそうにしてると俺も嬉しい、、、
彼が聞く「ドウシテあんなに取れるのにスーパーに買いに行くの?」って
俺「遊びで取るならいいけどお金を稼ぐ為に仕事をすれば そんな時間が無いから、、」
彼「日本人って朝から晩まで働いてばかりで可愛そう」
う〜ん 彼に同情されるとは思わなかった! でも多少は真実かも、、、
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同棲生活編 5

定休日の翌日 日曜日 仕事に出掛けようとカミイに声をかけた
まず昼食から、、食事の時 彼が顔をしかめて不愉快そうな表情、、
「どうしたの?」彼 口を指差し「痛い」って、、歯が痛むってこと?

レストランから出てから口を「あーん」と開けさせて覗き込むと指差してる所に虫歯が、、、
困ったぞ 今日は日曜 歯医者は開いていない、、、
仕方がないから薬局に行って「今治水」って歯の痛み止めを買ってきて虫歯に詰めた
今日は駄目でも明日は歯医者に連れて行かなくては、、、

彼 暫くして薬が効いたのか痛みが治まった
「今日は病院休みだから明日 治療に行くよ」って言ったら怖がっている
「治療しなけりゃ治らないでしょ!」って強く言う
彼 歯医者に行ったことが無いって、、、そういえば治療の後が1ヶ所もなかった、、

「この薬 良く効く 御土産に1つ買いたい」って彼が言う
「痛みは止まっても治療しなけりゃ治らない」って言ったら
「村の近くには歯医者は無いし あっても高いから多分行かない」って、、、

「じゃあ村の人 歯が痛い時はどうするの?」「何もしないで我慢する」
うげー 歯の痛みって我慢出来るほど やわじゃ無いと思うけど、、、
「歯が腐ってグラグラしてきたら抜く」って聞いたときは背筋がゾクッとした、、

その日の仕事が終わって翌日の歯医者の予約を取る為に目覚し時計をセットした
そして怖がって行きたがらないカミイをむりやり連れて歯医者に行った
彼 痛みは治まっていたから1時間待ちで治療室に入り早速 治療

まだ酷く傷んでいないから抜かずに治療が出来ると言われた
でも「あーんと口を開けて」とか「沁みますか?」とか同時通訳するのに困った、、、
「歯がしみる」なんて どう通訳すればいいのだろう、、、
「痛いときは手を上げて」だけで全て済ませてしまった、、(怨まないでね、、、)

彼が日本にいる間に この歯の治療の他 傷んでいる歯はすべて治療して帰すことにした
毎日付き合うのは大変なので この頃 今の形になったばかりの携帯電話を持たせて
カミイ一人で歯医者通いをさせる事にした
(話はそれるがこの頃はドコモなんて無く まだNTTで保険料込み23万もして通話料も高かった)

結局 この歯に冠を被せ他の歯の治療がすべて終わるのに数日おきに通って1ヶ月以上かかった
治療費は保険が無いから全部で7万以上かかった
随分 後になってから知った事ですがバンコクで歯の治療をすると「早くて安い」ので
皆さん誰か連れて来る時はバンコクで治療を済ませてから来日させましょう、、、

カミイ奥歯に冠が被った日 鏡を覗き込んで「凄い技術」って喜んでいた
良かったね!これで固い食べ物もへっちゃらだよ、、もう泣かなくていいからね、、
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